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「忘れたのか?この店の本来の目的は後悔や不安を心の中で整理することだ。小娘が来て半年以上たった。いい加減整理してこい」
「え、でも」
「整理してこないうちは店の敷居を跨がせない」
どうでもいい。そう思おうとしたのに心の中に沸き上がった気持ちは嫌だという気持ちだった。
「分かりました。整理してきます」
「あぁ。それで受験終わったらすぐ来いよ」
「はい」
私は早速家に帰ってから携帯に向き合っていた。携帯の画面には彼の電話番号が表示してある。後、もう一回画面にタッチさえすれば電話が彼にかかる。
タッチをしようとして、怖くて押せなくてもう1時間経つ。もう時刻は夜の7時。もうそろそろかけないと。勇気を出して画面をタッチした。部屋の中で電話の音が鳴る。私はドキドキしながら耳にスマホを当てた。
「もしもし」
電話から彼の声が響く。
「もしもし。咲良です」
「知ってる」
「そうだよね。画面に表示されるもんね」
「どうかしたのか?」
「あのね、明日時間少しもらえるかな」
「時間?いいけど。予備校が夕方からあるから午前になるけどいいか?」
「うん」
「何時からにする?」
「9時は?」
「いいぞ。じゃあ9時に昔よく遊んでたあの公園に待ち合わせでいいか?」
「うん」
「じゃ、おやすみ」
「おやすみなさい」
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