第4章

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「先輩なんだか元気ないような?」 「そう?」 「はい」 「なんかありました?」 「……いや、なにも」 「……そうですか。何かあったら協力は惜しまないんで相談してくださいね」 「ありがとう」 「では」 「うん。バイバイ」  ―――― 一部始終を思い出した。今でも思い出すと心臓が変になる。 「で、小娘。ぼーっとしてないで言え」  幸人さんの声に意識を引き戻され、ぼんやりとしたまま口を動かす。 「彼が……」 「彼が?」 「彼女と別れたんです」  短く言えばそういうことだ。 「そうか」  幸人さんがぽつりと言葉を落とし、私の目を見る。 「……それでどうするんだ?」 「……どうすればいいのかわからないです」 「……どうしたいんだ?」 「私、たぶん彼に対する恋心は薄まってると思います。ただ……なんかもやもやするんです」 「よし、わかった」 「何がですか?」 「小娘、もう来るな」 「……は?」 「受験終わるまでここに来るな」 「もうすぐ受験なのに?」 「小娘なら受かる。そして俺に教えられることはもうない。次に来るのは受験が終わった後にしろ。そしてそれまでに心のもやもやも何とかしてこい」 「それはさっき言ったことと矛盾してるような……」     
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