第1章

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 人は本当にショックを受けると涙も出ないと聞いていたがそれは本当のようだ。彼のことがずっと好きだった。それでこそ幼稚園の頃からずっと。  小さい頃は将来彼の恋人になって、やがては彼の奥さんになることを信じて疑わなかった。それを信じる根拠は結婚の約束をしたから……だ。  さすがに今の年齢になってそんなこと信じていない。そんな小さいころの約束で人、一人を自分に縛り付けれるなんて思ってない。  でも、でも!彼のお母さんにだって私が義理の娘になってくれたらうれしいとまで言われていた。そういわれて図に乗っていたのかもしれない。きっと自分で信じていないといいつつ信じていたんだ。手遅れになってからそれに気づくなんて……。  思考がぐるぐるぐるぐるループする。頭が狂いそうだ。本当に彼に先帰ってもらってよかった。彼にこんな姿見られたくない。今更かっこつけたって何も得られないことは知っているけど。  思い返してみれば私はずっと……私はずっと他人任せだった。自分で何かを起こそうだなんて思ってもいなかった。  クラスの女子が楽しそうに好きな男子を下駄箱で待って一緒に帰ったと話しているのを聞いても顔で微笑んで、そんなことをしないといけないなんて大変だと頭の中では他人事だった。     
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