夏の空と輝くきみ

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 小柄な健太など、すぐに人波に飲まれてしまう。  健太はもう自分がどっちの方向を向いているのかも分からなくなってしまい、とりあえず皆が進む方向へ流されるようにとぼとぼと足を進めた。  まわりにいるのは花火大会へ行く人ばかりだ。内藤とははぐれてしまったが、人の流れに乗って行けばそのうち会場である河原に着くだろう。 (花火大会って初めてだけど、こんなに人が集まるんだ)  右を見ても、左を見ても人ばかり。普通ならうんざりする光景なのだろうが、生まれて初めて見る光景がとても新鮮で、健太は物珍しそうにキョロキョロと辺りを見回した。 「……わっ」  つい立ち止まってしまい、後ろから体を押される。 「す、すみません」  またもや誰に謝ればいいのかわからないので、とりあえず「すみません」と健太が小さく頭を下げていると、突然強い力で手首を掴まれた。 「久米!」 「え……内藤?」  突然手首を掴まれ、驚いた健太が顔を上げると、内藤が焦った様子で健太の目の前に立っていた。 「悪い。気がついたら久米がいなくて、焦った。大丈夫か?」 「大丈夫、だけど」  本当は慣れない人混みに少し酔っていた。  たが、小さな子どもでもあるまいし、このくらいで気分が悪くなってしまったなんて、情けなくて内藤には知られたくない。  しかもせっかくの花火大会なのに、自分のせいで内藤が楽しめなくなってしまうのも嫌だ。健太は心配そうな顔をしている内藤へ「大丈夫だよ」と言ってにこりと笑いかけた。 「久米」 「内藤、そろそろ行こうよ……って、えっ? 内藤?」  内藤は健太の手首を掴んだまま人の流れから外に出ると、歩道の脇にあった縁石の端に健太を座らせた。  そのまま自分も健太の隣に腰をおろす。 「内藤?」 「久米、無理すんな。顔色が良くない」 「いや、大丈夫だって……」 「俺もちょっと休憩したかったから。だからちょっと俺に付き合ってよ」  健太に気を使わせないためなのだろう、内藤がニッと白い歯を見せる。  内藤にそう言われると健太もこれ以上「早く行こうよ」とも言えず、縁石に腰を下ろしたまま黙って顎を引いた。  二人並んで無言のまま人の流れを眺める。  親子連れ、カップル、友達同士……一定の方向へ向かって歩いている人たちは、みんなとても楽しそうな顔をしている。
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