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(俺たちはどんな風に見えているんだろう)
ふとそう思った健太が隣に座る内藤のことをこっそりと盗み見る。
まっすぐ前を見ている内藤の横顔。
同じ年なのに、まだ子どもっぽさの残る健太と違って内藤の精悍な顔立ちはとても大人びて見える。自分にはないその男らしい表情に健太はつい見とれてしまった。
「うん?」
その時、内藤のズボンのポケットからスマホの着信音が聞こえた。健太が慌てて内藤から顔を背ける。
「ちょっと待ってて」
健太にそう言い置いて、内藤がスマホを耳に当てたまま腰を上げる。そのまま内藤は健太から少し離れたところへ歩いて行ってしまった。
(ああ、もう。なんで俺ってこうなんだろう……)
内藤がいなくなると、健太は項垂れながら大きくため息をついた。
今ひとつ内藤を前にどんな態度でいればいいのかがわからない。これまでのこともあるし、少しは慣れたといってもやはり内藤の前では緊張が優ってしまう。
それに花火大会が初めてなら友だちと連れだって遊びに行くのも今日が健太にとって初めてのことだ。
そんな中、普段どおりにしようと思っても、普段の自分がどんなだったのかが思い出せない。
高校生にもなって友だちと一緒に遊びに行ったことがないなんてあまり聞いたことがないが、健太の場合は仕方がない。
そのほとんどを病院のベッドの上で過ごした小学生の頃はもちろん、中学校に上がってからも健太は周りからどこか遠巻きにされていて、健太にはずっとどこかへ一緒に遊びに行くような親しい友達がいなかった。
「お待たせ」
どのくらい経っただろうか。頭のなかで何度も「どうしよう」と繰り返しながら俯く健太の手元に冷えたスポーツドリンクのペットボトルが差し出された。
健太が顔を上げると、内藤がニッと笑って健太の隣に腰を下ろす。
「ありがとう。あの、内藤……俺本当になんともないから。みんなが待ってるし、行こうよ。あっ、それにこれのお金も払わなきゃ。いくらだった?」
「お金はいいよ。小銭がたくさんあったから。あと、思ってたより人が多いし俺と久米は別行動するって斎藤と電話で話した」
「そんな……だって……」
「いいって。それより、休憩のついでに俺の話、聞いてくれないか?」
そう言うと、いきなり何なのだろうと首を傾げる健太の隣で内藤は前を向いたままぽつりぽつりと話し始めた。
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