夏の空と輝くきみ

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 ほとほとと階段を下りていた内藤は、ベッドで半身を起こしていた祖母の姿を思い出し足を止めた。  いつもの元気はなかったが、普段と変わらずにこにこと微笑む祖母は、内藤の目には病を患っている風には見えなかった。  病床の祖母のことを考えていると病院内を探検する気もすっかり失せてしまい、内藤は階段の途中に腰をおろした。 『……っ………っく、う』 (――――ん?)  内藤がいる四階と五階の間よりずっと下の方から誰かの声が聞こえてくる。どうやら子供で泣いているようだ。 『ひっ……っ、うっ』  一生懸命に泣くのを堪えているようで、その声は耳を凝らさないとよく聞こえないくらいに小さい。  内藤の知っている入院患者はみんな大人ばかりだし、祖母に会いに病院を訪れても子供の姿はほとんど見かけない。  そんなところで子供がいるという物珍しさも手伝って、内藤は泣き声の聞こえてくる階下へそろそろと移動した。 『ひ……っく、うっ……あ』  泣き声の主は一階の階段の隅っこにいた。  青色のパジャマを着ているところをみると男の子らしい。それに内藤のクラスにいる一番小柄な子よりもずっと体が小さいので、どうやら内藤よりも年下のようだ。  その子はパジャマ姿の小さな体を階段の隅で目一杯丸めていて、折れそうなくらいに痩せた腕から伸びたチューブが、滑車のついた帽子かけのようなスタンドに下がった点滴とつながっていた。 (あの子も入院してるのかな)  何となく話しかけづらい雰囲気で、内藤は二階の踊り場からこっそりと泣いている子の様子を窺った。  きっと泣いているところを誰にも知られたくないのだろう。踞るように膝を抱え、泣き声が外に漏れないように必死で顔を伏せている。 (どこか痛いのかな……気分が悪いのかな……)  なかなか男の子が泣き止まないので内藤もだんだんと心配になってきた。  たが内藤が話しかけたところで、おそらく男の子は何も答えてはくれないだろう。どこかそんな必死さがその子にはあった。  内藤が二階の踊り場にうつ伏せになり、階段の手すりの隙間から顔を半分だけ出す。  男の子のことがどうしても放っておけなくて、内藤は彼が泣き止むまで見守ることに決めた。
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