夏の空と輝くきみ

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 待ち合わせの時間を過ぎてもまだ家にいるだなんて、内藤もきっと呆れているに違いない。  今からどんなに急いでも健太の自宅から待ち合わせ場所の河原まで三十分はかかる。  着ていく服を選ぶのに二時間もかけてしまうくらい楽しみにしていた花火大会だったが、内藤をはじめ一緒に行くはずだった他のみんなにも迷惑をかけることを思うといたたまれない。  健太はスマホをぎゅっと握り直すと、意を決したように口を開いた。 「あの……ホントごめん。今日はもう……」 『大丈夫か?』 「え?」 『もしかして体調が悪くて寝てたとか』 「体調?」 『久米、最近すごく頑張ってただろ? 部活。具合が悪いなら無理することないから。みんなには俺から言っとくし』 「え、あ……」  確かに健太はここ最近、とても部活に力を入れていた。  高校二年に上がってから思いきって入部した水泳部。健太にとっては部活に入ること自体初めてで、しかも水泳部にとってこれから始まるオンシーズン、特に夏休みに入ってからは他の誰よりも早くプールに顔を出していた。  ただし、マネージャーとしてだが。 『――それじゃあ、ゆっくり体を休めとけよ』  内藤の中で健太はすでに具合が悪くて寝込んでいたことになっているらしい。さっさと電話を切り上げようとする内藤を引き止めるように、健太は思わず携帯に向かって叫んでいた。 「待って! 行く、行くからっ! えっと、学校の近くの河原だったよね。ちょっと遅れるけど、俺、行くからっ! 絶対行く! えっと……体も全然疲れてないし、ほんと元気だから。俺、打ち上げ花火とか近くで見たことなくて、今日は本当に楽しみにしてたんだ」  手の中の携帯端末に向けてひとしきり叫び、少し落ち着きを取り戻した健太は、そこでやっと内藤が無言なことに気づいた。 「あ、あの……内藤?」  部活の友達同士で行く花火大会にこんなに必死になるなんて、変に思われてしまったのだろうか。そうでなくても引かれているのかもしれない。  健太が恐る恐る内藤の名前を呼ぶと微かに笑う気配がした。
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