夏の空と輝くきみ

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 自宅の最寄り駅から電車で三つめ。待ち合わせ場所は健太が通う高校の近くにある河原だ。  夏休みに入る前は通学中に毎日見ていたはずの車窓の景色が、いつもの見馴れたものとどこか違う。  普段は朝日を受けて輝いている家の屋根やビルの看板。それが日の暮れた今は街全体に薄墨がかかっているようで、健太の目には少し見知らぬ場所のように映った。 (電車……乗り間違えてないよな)  間違いなく下り電車のホームへの階段を駆け上がったはずだ。だが、行き先の表示を確かめもせず停まっていた電車へ慌てて飛び込んだので、もしかしたら逆方向の電車に乗ってしまったのかもしれない。  妙な不安感に襲われた健太は、外の景色が本当にいつもと同じものかどうか確かめようと、電車のドアにぺたりと張りついた。  右手が無意識にTシャツの胸元に触れる。小学校の頃からの健太の癖だ。  見知った建物がないか遠くの方まで注意深く見渡してみるが、電車に乗り込んだときよりもずいぶん外は暗くなっていて、窓に額をくっつけないと外の景色がはっきりとわからない。  健太は前髪に癖がつくのも忘れ、窓に額をくっつけた。 「あ、あった」  目を凝らして、やっと見覚えのあるカラオケ店の看板を健太が見つけたタイミングで電車がひとつめの駅に到着した。 「……たっ」  停車したのと同時に電車がガクンと揺れ、その拍子に健太の額が今までくっつけていた窓に思いきりぶつかった。頭の中でゴンと鈍い音が響く。  ぶつけた額を手のひらで押さえながら健太が背後を振り向くと、立っていたのとは反対側のドアが開いて乗客が乗り込んできた。  花火大会に行くのだろう、友人同士のグループやカップルの姿が目立つ。  楽しそうな彼らの様子を見ていると、まるでひとりきりで電車に乗っているのが自分だけのような気がして、健太はまたドアの方へと向き直った。  ひとつ見知っている建物を見つけると、後はどのあたりに何があるのか大体の予想がつく。  カラオケ店の隣にコンビニ、そしてもうしばらく行くと大きな書店がある。  健太はいつもとは少し雰囲気の違う外の景色を、ひとつひとつ確かめるようにじっと窓の外へ目を凝らせた。
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