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暫し考え出した結論は、やはり犬そのものだった。
「それでも良い!」
再度怜治へと抱き付こうと手を伸ばす小太郎だったが、その手はパシリと払い除けられて空を泳ぐ。
「腹空いた。朝から何も食ってないんだ。小籠包作れ。」
「え?いや、でも……。」
「あの律の事だ。心配させた罰とか言って、暫くは俺の嫌いなメシをテーブルに出すだろうからな。今のうちに美味いもん食わせろよ。」
照れ臭そうにガシガシと頭を掻きながら言う怜治。
小太郎は自分が必要とされる嬉しさにヤニ下がった自分の顔をキュッと引き締め、言った。
「あ、でも下処理に時間掛かるし、それ以前に材料が……。いやいや、その前に恋人同士のイチャイチャを…。」
「あ?何だよ作らないのか?」
「……作らせて頂きます。」
この先、この関係は変わらないんだろうなぁと、小太郎は未来を想像した。
それでも良いと思った。
この女王様で、天邪鬼で、強がりで、可愛くて、でも誰よりも寂しがり屋で愛しいと思うこの人が傍に居てくれれば。
「怜治さん。」
「あ?」
「好きだよ。」
「…………。」
返って来たのは、背を向けたまま呟く小さい声。
「知ってる。」
怜治が素直になるのには、まだまだ時間が掛かりそうだった。
― 完 ―
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