第6章

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小太郎の鼻を指さす真琴の表情は真剣そのもので、からかわれている訳では無いと小太郎は悟る。 「言葉がダメなら……行動で?」 「はい、正解。」 「ふがっ!」 鼻をつままれ、変な声が出てしまって恥ずかしい小太郎だが、話の先を進めた。 「家を出て行かないように、監禁でもしろって事?」 「お、監禁、良いねぇ、あの怜治さんが監禁されてる姿なんてゾクゾクしちゃうね俺!」 真琴は自分の身体を両手で掻き抱き、大げさにグフフと笑う。 「もう!茶化さないでよっ!」 「へいへい。まあ、監禁までは行かないでもさ、これだけ周りに心配掛けてんだから、それに近い事はしちゃっても良いと思うよ?俺は。」 「でも……。」 「言葉なんてなぁ、いくらでも好きなように言えるんだよ。本当の事でも、嘘の事でもな。怜治さんはそれを分かってる。だから、他人の言葉を信用しない……信用出来ないんだ。」 (長谷川さんと同じ事言ってる……。うん、そうなんだよね……。頭では理解していても、他人を信じる事が出来なのが怜治さんなんだよね……。) ああ、と小太郎は思った。 本当に真琴は怜治の事を理解しているのだと。 やはりこの二人の間には、見えない絆があるのだと確信した。 (恋人って言う絆じゃ無いけど、それでも、怜治さんにとって特別な真琴さんが羨ましいよ……。) けれども今は、つまらない嫉妬をしている場合では無い。 その怜治本人に家に帰って来て貰わない事には、自分との関係も進展するどころか、切られてしまうのかも知れないのだから……。 小太郎はぎゅっと拳を握り締めた。 「あの、真琴さん!京にぃと律にぃにはもう相談したんだけど、真琴さんにも相談しても良いかな?」 「んあ?」 攻め寄られ、ビクッとする真琴に小太郎は真剣な表情で言う。 「俺、考えてる事があるんだ。真琴さんが言う『行動で示す』って事に、コレもなるかどうか、コレで正しいかどうか、話を聞いて貰っても良いかな……?」 出会った頃と変わらぬ強い眼差しの小太郎。 (考えてるって……言う表情じゃ無いよな。もう決めたって顔してるぞ?小太郎少年よ。どんな楽しい事を考えたってんだ?) ニヤリと不敵な笑みを浮かべる真琴。 「言いぜ?聞いてやるよ。」 だが、小太郎の考えを聞き、頭を抱え込んだのは僅か数分後だった。
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