最終章

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小太郎は書類を丁寧に畳み直しポケットへと仕舞い、自分の想いを怜治へと語る。 「シャレじゃないってば。俺はずっと怜治さんの傍に居たいって、前から言ってるでしょ?それを信じて貰う為には、この方法しか無いかなーって思ったんだよ。怜治さんに家を出られるかって聞かれて、俺は出られるって、怜治さんの為なら何でも出来るって答えたけど、やっぱり、怜治さんの傍を離れる事は出来ないよ。ずっと傍に居たいもん。」 ずっと傍に。 それがどういう事か本当に分かっているのかと、怜治は心底呆れる。 「ほんっと、アホだ。ウチは世間一般とは違うんだぞ……宇崎の名で苦労する事もあるのに……。」 「うん、分かってる。でも、それも覚悟の内だって。いや、怜治さんと同じ苦労なら喜んで受けるよ。」 「気楽に考えやがってっ……!」 えへへと締まり無く笑う小太郎を怜治はぶん殴ってやりたかった。 何故そんな簡単に自分の人生を投げ出せるのかと不思議だった。 (世間体とか、家の事とか、絶対苦労するって分かってるのに、どうしてこんなに迷いが無いんだよ……。) 若さゆえか。 盲目的な愛ゆえか。 それは怜治にも、小太郎本人にも分からぬ事だった。 ただ、怜治の傍に居たいと言う小太郎の強い思いが、大胆な行動をさせたのだ。 (アホだ……ほんとにアホだ……。) 怒りを通り越して呆れる事しか出来ない怜治。 (養子だなんて……普通、高校生がこんな事までするか?こいつは本当に俺の想像を上回る事をやってくれるよなぁ……。) でも、悪く無いと思った。 これだけ想われて、行動に出て、求められたら……両手を上げて降参するしか無い。 (ああ、もう、考え込んでた自分が馬鹿らしくなって来た……。) かの、ある意味自分よりも自由人な友人の言う様に、己の思うがままに生きてみるのも案外良いかも知れないと、怜治の表情が緩む。 一度認めてしまえば至極簡単なもので、心が軽くなった様な気がした。 憑き物が落ちたような、影の無い瞳を見て、律は自分に出来るのはここまでだと、そっと部屋から退室したのだった。
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