最終章

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二人だけが残された部屋で怜治がため息混じりに呟く。 「参った……。お前にここまでやられるとは思わなかった。」 「だって、俺、怜治さん大好きだもん。」 臆面も無く言う小太郎を、怜治は呆れ気味に見つめる。 「怜治さんを不安にさせないよう、何度でも好きだって言うよ。」 「うぜぇ……。」 「この家に居て、ずっと怜治さんの傍に居て、怜治さんが信じてくれるまで、好きだって毎日言い続ける。」 「ほんとうぜぇ……。」 「毎日お帰りなさいって言う。美味しいご飯を作って待ってる。だから、毎日帰って来て、俺に怜治さんの笑顔を見せてね?」 「…………努力する。」 「ははっ!怜治さんらしい返事!でも嬉しい!」 目の前には、満面の笑み。 一点の曇りも無いその笑顔を見て、ふと突然、怜治は理解した。 (ああ、そっか……。うん、こいつの笑った顔が、俺は好きなんだ。) この笑顔を見ているだけで自分も嬉しく思ってしまう。 この温かな笑顔をずっと見ていたいと思ってしまう。 (太陽のような笑顔……。そうだよ、俺は、この笑顔が欲しかったんだ……。) この笑顔をずっと見ていたい。 今願うのは、それだけ―――。 「怜治さん?」 突如言葉を発しなくなった怜治を訝しがる小太郎。 不安に瞳を揺らす怜治の表情は今にも泣き出しそうで、小太郎はドキリとした。 「れ、怜治さんっ?!どうしたの?大丈夫?!」 慌てる小太郎から視線を離さず、怜治は口を開く。 「自分が求めるだけの都合が良い話だって事は分かってる……。」 「え?」 抑えていた感情を、胸の内を、情けないと思いつつも怜治は曝け出す。 今、この時に言わなければ、もう二度と言えない気がした。 「けど俺は、お前が俺を好いてくれていると、信じたい、信じていたいんだ……。だから……。」 言葉を詰まらせながらも、嘘偽りの無い気持ちを伝える怜治。 「信じさせてくれ……。」
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