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「えへへー、調子にも乗るよ。こうして抱き締めても怜治さん突き放さないんだもん。拒絶しないって事は、俺の事が好きって事でしょ?」
「っっっ?!」
怜治は言葉を詰まらせ何も言えない。
睨み付けながらも、耳とうなじは真っ赤で、それが図星を刺された事を意味していた。
嬉しそうなニコニコ顔の小太郎はここぞとばかりに再度、紅潮した頬へとキスを降らせる。
先程までの低迷していた気分はどこへやら、主導権を握られっぱなしで、無性に腹立たしい思いの怜治は歯噛みすした。
(ちっくしょう、ムカつくっ!そのニヤけた顔をひっぱたいてやりたい!!)
「怜治さん好きだよ?怜治さんをハグ出来るなんて幸せ。」
飼い主に従順な犬のように、無邪気に笑う小太郎。
「怜治さんが俺の事を好きだって言ってくれたら、俺はもっと幸せなんだけどなぁ。」
チラリと催促の視線を受けた怜治はふと笑い、腹に力を入れて告げる。
「……頭に乗り過ぎ。調教が必要だな。」
「あいててて!酷い、横暴だ……。」
足をグリグリと踏み躙られ、文句を言いながらもこの満面の笑み。
ささくれた心を宥めてくれる小太郎の笑顔。
この笑顔が自分には必要なのだと怜治は思い知る。
(こんなガキにこの俺が翻弄されるとはな……。ヤキが回ったなぁ。)
怜治は大きくため息をつき、小太郎の逞しい胸へと体重を預けた。
「怜治さん?」
呼吸を整え、怜治は告げる。
「耳を貸せ。良いか?一度しか言わないからな?これを聞き逃したら、お前は一生後悔するぞ?」
「え?何?」
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