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そんな見目麗しい律の横にちょこんと寄り添っているのは、この宇崎家の飼い猫である白雪(しらゆき)と、怜治が見た事の無い、ガリガリに痩せ細った貧相な少年。
白雪がにゃあと鳴くと、少年は律の後ろに身を隠すようにし、好奇とも敵意とも取れぬ視線でじっと怜治を見つめる。
そんな行動が怜治の不信感と共に眼光を鋭くさせ、少年を睨み付ける形となった。
「何だこのガキは……。」
ひと睨みすると少年は慌てて視線を外し、完全に律の後ろへ。
「そんなに睨まないで下さいよ。小太郎が怯えてるじゃないですか。」
「は?こたろう?誰?」
聞いた事も無い名前に、怜治は戸惑う。
律は後ろに隠れてしまった小太郎の背中を軽く押し出し、挨拶をするように促した。
「なぎはら……こたろうです。宜しくお願いします……。」
俯き小さな声で自己紹介する少年を怜治は胡乱な目付きでしげしげと見やる。
短い髪。
細い手足。
警戒姿勢に、人を射抜く視線。
(飼い主以外に懐かない見窄らしい犬……。)
それが、怜治の小太郎に対する第一印象だった。
「ええと、詳しい事は後でゆっくり説明しますけど、今日から宇崎家で預かる事になった、小太郎です。」
「は?」
「今日から家族の一員として、この家で暮らす事になりました。」
「……はあぁ?!」
にっこりと、誰しもが見惚れてしまうような綺麗な笑顔で簡潔に説明する律と、口をあんぐりと開けた、滅多に見られぬ間抜け顔の怜治。
そんな彼の足に白雪は名前の通り真っ白な体を摺り寄せて甘えるが、撫でて貰えずに不満顔を見せる。
二人を交互に見やる小太郎は申し訳無さそうに、華奢な身体を更に小さくさせたのだった。
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