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ここは律の父親が預けられ育った児童養護施設。
そしてまた律も、少しだけお世話になった事のある縁深い場所。
楽しい事、悲しい事、たくさんの色んな思い出が詰まった家。
子供達が安らげるこの家を守っているのは、律にとって祖母とも言える女性だ。
白髪を結い上げた細身の女性の背中に律は声を掛ける。
「長谷川(はせがわ)さん、こんにちは。」
木々の多い庭で数人の子供達と楽しそうに洗濯物を干していた長谷川は、律の明るい声に振り向いて可愛らしい笑顔を見せた。
その周りにいた子供達も律に気付くと次々と笑顔に。
「あ、律にぃだ!いらっしゃい!」
「こんにちは!」
「律にぃ遊んで!」
口々に歓迎の言葉をくれる子供達。
その頭を律は優しく撫でてやる。
「遊ぶのは後でね。長谷川さん、手伝いますよ。」
既にシャツの袖を捲くっている律に、長谷川は洗濯籠を手渡しながら『ありがとう』と微笑む。
受けた取った水分を含んだシーツは見た目以上にずしりと重く、律は長谷川の力持ちさに内心驚きつつ尊敬の目を向ける。
干された、大量の真っ白なシーツ。
これを取り込むのも一苦労だろうなと、律は思った。
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