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三
僕の変な第一発言も驚きすぎて忘れたという彼女の本音か冗談なのか分からなかった発言に、ただただ赤くなっている自分がいた。彼女は何も無かったように、
「じゃあ、受ケ留君は私のこと何でも知ってるの?」
「うん。」
「じゃあ、誕生日は?」
「八月三十日。」
「おお!」
これはまだ僕達が“真海”と過ごしていた時に言っていた事だ。真海はしつこく自分の誕生日を主張してきたので、適当に真琴の友達に言って、誕生日会を開いたのは今でも鮮明に憶えている。僕は部屋に籠もっていて静かに過ごしていたが、わざとなのか知らないが、真琴は普通に僕の名を呼んだ。嫌な予感がするので降りたくなかったが、僕の名前を呼ぶ声がずっと聞こえるので渋々降りてみると、嫌な予感通り何で同じ家に住んでいるの?とかと質問攻めを食らった。僕は何も答えず、真琴が下手くそな言い訳を言っていた事だって今でも憶えている。
「でも、何で今まで言わなかったの?」
「言えなかった。っていうかその時まだ僕が君のこと何も感じなかったて言えば良いかな?分かる?」
「変なのー」そう呟き彼女は僕に向かって微笑んだ。あの時、僕達が一緒に住んでいた時の自然な笑顔。いったい何年ぶりだろうか。僕は覚悟を決め真琴にこの先起こること全てを話した。
この先真琴が死ぬこと。
僕の目の前に突然現れたこと。
僕の心を救ったこと。
僕達が愛し合ったこと。
全部を真琴に話した。真琴は俯き小刻みに、まるで震えてるかのようにうなずいていた。僕にはそれが、まるで自分がここに来ることを知っていたかのように、この先に起こることを知っていたかのように、泣いているように見えた。
真琴は僕の話を聞き終わると、何を思ったのか急に立ち上がり、
「そっか!私、殺されちゃうんだ!えへへ。」
と、何故だか笑っていたのだ。
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