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父親・母親役は、姉妹との「別れの日」を知っていた。
姉は森沢家、妹は武藤家として暮らし始めた日が、姉妹がサイボーグ化された日。姉妹にとっては最悪の日である2066年7月20日 火曜日。「別れの日」は、その日から5年後の2071年7月である。今は2066年9月。あと5年弱。
姉妹は上記「B.A.N.S」によりコントロール済み、でも自分達は生身の人間。笑いもすれば、泣きもする。最初に不安がよぎったのは、妹 駒元安佐未(武藤安佐未)の母親役の武藤あゆみ。
前記「サイボーグとなった駒元奈良未・安佐未姉妹の日常」章での
「(母 あゆみ)寝ながら、テレビ見ながら、お煎餅って」
「(安佐未)うん、だって、お夕飯食べたけど、お腹空いちゃったぁ」
「(母 あゆみ)あらあら。食べ盛りだからね、仕方ないか」
「(安佐未)そうそう」
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この部分は自然すぎて、人間とサイボーグとの会話とは、とても思えない。
妹の母親役 武藤あゆみも同じだった。
前述したように姉妹と暮らす条件は「ひとりっ子」の家庭環境である。姉妹が子どもとして家庭に入って「ひとりっ子」である。つまり、選定される前は森沢家・武藤家ともに、子どもにはめぐまれなかった。当然、一般的には、夫も妻も子どもは欲しい。そんな家庭に理想的な子どもを送り込んでおいて、治安維持のためだからといって、子どもを奪う。母親役にとっては、わかってはいたものの、あまりにも残酷である。
以下2066年9月7日 火曜日 妹 駒元安佐未(武藤安佐未)が暮らす武藤宅での会話(抜粋)
「(武藤敦彦《むとう あつひこ 駒元安佐未の父親役 防衛省 海上自衛隊 3等海尉 潜水艦「ななつのうみ」第3副艦長 以下 父 敦彦》)あれっ、安佐未は?」
「(母 あゆみ)きょう、学校」
「(父 敦彦)そっかぁ、今日は火曜日かぁ」
「(父 敦彦)まだ寝てようかなぁ」
「(母 あゆみ)今日、あの子つれて、おいしいものでも食べにいこうかなぁ、いいお天気だし」
「(父 敦彦)あっ、じゃぁ俺も」
「(母 あゆみ) だめよ、女どうしなんだから」
「(父 敦彦)え~、いいじゃん、あゆみはいつも安佐未と一緒だから、たまには俺も一緒だって」
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