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防衛省は、ある程度、このような状態は予測していた。姉妹が暮らす家は、同じマンションとし、転校理由も「潜水艦」を関連させ、周囲にわかりやすいようにした。キャリアも、同じ海上自衛隊「3等海尉」を選択。生活上の様々な課題も、同じ職場なら相談しやすい。また、家どうしでの、例えば、家族旅行等のコミュニティの中でも、解決できると思っていた。職場の上長以上は、当然、事情を知っていた。相談しやすい環境は整えてあった。専門医も待機していた。万全なバックアップをしていた。
このような事態を迎える中で、旧 独立行政委員会 国立再生治療先端科学研究所 第66研究室 通称チームサイボーグ、現 防衛省 自衛隊 高度国際間・国内紛争問題研究・解決・処理本部 中央管制隊は「ブースター・アタッチメント・ネットワーキング・システムス(B.A.N.S Booster Attachment Networking Systems)」の人工頭脳ネットワーキングの高性能レベルに改めて驚愕した。
そこで、同中央管制隊は、妹の暮らす武藤家母親役の武藤あゆみ、姉の暮らす森沢家母親役の森沢紗佳の「現状からの回復方法の答え」を「B.A.N.S」に求めさせることにした。
「B.A.N.S」からの解答結果
1.過去の負い目的イメージが連想されるのは、決まって、姉妹が外出等、武藤・森沢両自衛幹部官の妻の至近に不在な時に起こる(今までいた子どもが突然いなくなる。母親から母親でなくなる。喪失感が全身を襲う)。
2.1.のような時間は、姉妹と会う前にも存在していたが、そもそもは、夫婦2人の生活圏のため、出会う知人等も、武藤・森沢両自衛幹部官宅と同様の家族構成だった。このため、負い目のきっかけとなる「知人の子ども」との遭遇は、ほとんどなかった。
3.実験体であるサイボーグを人間と錯覚、ないし、誤信してしまうことが原因。今までの人生の岐路についての決断に、誤りがあったと思い込ませることとなってしまった。この原因を排除してしまえば、例え、上記1や2のような事象が発生しても、平静心は失われない。
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