父親・母親役の葛藤

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父親・母親役の葛藤

サイボーグ化された姉妹は、それぞれの機能・効果を活かした役割を担うよう、設計・指示がされている。 姉は、前述来の実績からもご理解いただけるように「治安維持」妹は「国の責任を果たす」である。 姉妹の役割は、本質的には短期的なものにしてはならない。サイボーグ化ということは、当然、自然人である我々よりは、はるかに寿命が長く、半永久的なものでなければならない。 現在、姉は森沢家、妹は武藤家の子どもとして暮らしている。姉は長女、妹は次女だ。当然、戸籍もある。住民票等での表記も子で、養子縁組でなく、正規婚姻間で生まれた嫡出子としている。 実生活においても前記「サイボーグとなった駒元奈良未・安佐未の日常」で述べた通り、姉妹の両親役は自分の子として扱い、実社会に溶け込んだ生活を送っている。 勿論、任務である。 姉妹のサイボーグ体は、前記来の「マイクロ・ナノ・ダイヤモンド・シリコーン・パウダー(M.N.D.S.P Micro Nano Diamond Silicone Powder)」素材を使用して「リボーン・エレメント・カプセル・マークII」により製造され、それぞれ上記の役割果たせるよう、堅牢なものである。設計開発の調整により、人為的に劣化、人間でいう老化をさせることもできる。しかし、姉妹の役割上、その必要は認められず、むしろ逆の、半永久的寿命が求められる。 当然、我々の状態とは異なる。上記父親・母親役は、年々、歳をとる。サイボーグの姉妹は、いつまでも中学3年生の姉と中学1年生の妹だ。 「実社会に溶け込ませる」という任務の期間にも、自ずと限界がある。 せいぜい5年が限界。父親・母親役と姉妹が一緒に暮らせる期間である。 今や、父親・母親役にとって姉妹は、自分の子どもの理想的存在になっていた。 姉妹の動作活動は、前記「現状での最先端技術による人工頭脳レベルとその効果」章で述べた「ブースター・アタッチメント・ネットワーキング・システムス(B.A.N.S Booster Attachment Networking Systems)」という高性能人工頭脳ネットワークでコントロールされている。 姉妹の役割が円滑に進行するよう、家庭環境は「ひとりっ子」であることが選定条件とされた。父親・母親役は、単に「期待されている」「一任務」のように「仕事」として捉えていた。
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