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二〇一六年、探偵業法が改正され、刑事事件の捜査権が与えられることになった。
探偵は警察官と同様に拳銃及び警棒の携帯が許され、犯人の逮捕から送検までが出来るようになった。
同法改正と共に探偵業は資格制となり、探偵学校に十ヶ月間通って卒業するか、探偵業試験を受けて合格をするかのどちらかを選択しなければ、探偵になれなくなっていた。
新たに施行された探偵業法では、旧探偵業も行うことができる。そのため、刑事事件以外に民事事件の調査も可能となっている。
探偵を志願した坂上 聡美は、探偵業試験を受けて見事に合格をしていた。
その際、聡美は探偵手帳と拳銃、手錠などの業務に必要な用具一式を公安委員会から受け取っていた。
斯(か)くて、探偵になった聡美は、新宿の住宅街に私立探偵事務所を開いていた。
その日、聡美の事務所に依頼人がやってくる。
扉が開き、見窄らしい女性が入ってきた。
「こんにちは……?」
「いらっしゃいませ」
聡美は女性にソファへ座るよう促した。
「まずはお名前を伺いましょう」
「横田 洋子です」
「どういったご依頼ですか?」
「夫が首を吊りまして」
「旦那さんが?」
「はい。遺書があったのですが、私には自殺に思えなくて」
「そうですか。それはお気の毒に。それで、ご主人の死の真相を調査すればいいのですか?」
「お願いします」
横田が封筒を差し出す。中には五十万ほど入っていた。
「これで調べていただけないでしょうか?」
「わかりました、お引き受けしましょう」
「本当ですか? ありがとうございます」
「それで、早速なんですけど、現場を見させていただきたいのですが、よろしいですか?」
「もちろんです」
「では車を出しますので、道案内お願いします」
聡美は愛車のAE86・スプリンタートレノで横田と共に、彼女の自宅へとやってきた。
家に入り、遺体が発見された和室を隅々まで拝見する聡美。
ある程度見て回ったところで横田に訊ねる。
「横田さん。亡くなる前に旦那さんに何か変わったところはありませんでしたか?」
「いや、特に気づきませんでしたけど……」
「そうですか」
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