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「ふぁ、おわり?」
眠そうに眼を擦る幼い少女の頭を撫でながら、私は話を終えました。クスリと笑うと、幼い少女に言いました。
「もう眠そうね。無理しないでベッドに入りなさい。また明日ね」
「うん、お話ありがとう。天使のお姉ちゃん。おやすみ」
そう言って幼い少女は部屋を出ていきました。入れ替わるように幼い少女の父親が部屋に入ってきました。寂しそうな表情をしています。
「……本当に行ってしまうのかね。もう少しゆっくりしていっても……」
「……ええ、もうここは十分開拓も進みましたし、そろそろ暖かい季節ですからね。いいタイミングなんです」
「……わかったよ。君には世話になった。今日はゆっくり休んでおくれ」
そして一人部屋に残されると、私は欠伸をしながら相棒に話しかけました。
「また引き留められたね。嬉しいもんだけど、悲しいね」
『……君が望むなら、別にここに定住してもいいんだが……』
「嫌よ。私は旅立って、仲間を見つけて、そして幸せを壊すのが目的なんだからね」
『まったく、強情な……』
私は軽く笑いながら自分の尻尾に語り掛けました。蛇の尻尾は、あの怪物の声で語り掛けてきます。私は自分の鷹の羽を繕いながら、喋る尻尾と雑談をします。
『それにしても、君の話を作る力はいっそ秀逸だね。なんだよ青い宝石って。僕はそんな怪しい代物で動いてはいないよ』
「仕方ないじゃないか。本当のことは言えないよ。自分の心臓を抉り出したとか周囲が血の海になったとか、心臓を無理やり口に入れられたとか言えないわよ。正直、あの時は私だってドン引きだったんだからね」
『いや、まあそれを言われると何も言い返せないんだけど……』
蛇の尻尾はその身をくねらせて申し訳なさそうに言いました。その様子がおかしくて私は笑います。
「じゃあ明日はどっち行こうか。東は海だから、北か西か。西は山越えが面倒だね。北がいいかな」
『いや、東の海はここからならすぐ向こうの大陸に付けると聞く。群島もあるようだし、十分飛べるはず』
「……無茶言わないでよ。渡り鳥じゃあるまいし、そんなことできるわけないじゃない」
『意外と簡単だよ。僕の翼の力を舐めちゃいけない。3日も飛び続ければいいだけさ』
「苦労するのは私なんだけどなぁ……」
羽の生えた私と蛇の尻尾は夜遅くまで談笑していました。
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