81人が本棚に入れています
本棚に追加
「悩むことはないさ。教えてやるからここにいればいい」
言って冬馬は僕の瞳を見つめたまま
柔らかく指先を口に含んだ。
「そうだ。知らなければいけない事から目を背けるな」
由莉はと言えば
随分気に入っていた僕の髪をかき上げると愛しげに鼻先を埋めた。
最初から用意周到だったんだ。
彼らは僕を引き留める切り札をたくさん持っていた。
「頷いて。ここに留まるね」
「う……」
万が一ここで撥ねつけても
きっともっとたくさん――。
部屋を照らすキャンドルの気怠い仄灯りに
壁には一面――淫靡に蠢く僕らの影。
最初のコメントを投稿しよう!