第2章

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「悩むことはないさ。教えてやるからここにいればいい」 言って冬馬は僕の瞳を見つめたまま 柔らかく指先を口に含んだ。 「そうだ。知らなければいけない事から目を背けるな」 由莉はと言えば 随分気に入っていた僕の髪をかき上げると愛しげに鼻先を埋めた。 最初から用意周到だったんだ。 彼らは僕を引き留める切り札をたくさん持っていた。 「頷いて。ここに留まるね」 「う……」 万が一ここで撥ねつけても きっともっとたくさん――。 部屋を照らすキャンドルの気怠い仄灯りに 壁には一面――淫靡に蠢く僕らの影。
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