ハッピーエンド論争

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ハッピーエンド論争

 物語には、必ず結末というものが存在する。  小さいころ目にした絵本は、必ずと言っていいほどハッピーエンドばかりだった。  手にした絵本のページを捲れば、小さな紙面いっぱいに広がる幸せそうな顔をした女の子。物語の結末に至るまでにいくつも涙を流し、そうして得る、最高の幸せ。  しかし、 「『――少女は王子様と幸せに暮らしました。めでたしめでたし』……くだらなーい」  音を立てて絵本を閉じた。 「ハッピーエンドなんて大嫌い」  私は、こんな《幸せな結末》が大嫌いなのだ。  学校の立入禁止の屋上。寝転べば、広がる青い空。もし、これが物語の舞台ならば、今この瞬間もハッピーエンドとなるのだろうか。 「十八年間、一度も恋の実らなかった少女、青杉蓮歌(あおすぎれんか)は空を見上げて安らかな眠りにつきました。めでたしめでたし……とか?」  そう呟いて、鼻で嘲笑(わら)った。     
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