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それにしても「快速くびきの」の窓から見える景色は明るい。その真っ白な景色は、東京の景色と似ても似つかない。
しかし、その青い空が僕の心をしめつけた。
僕は心が張り裂けてしまわないように身をかがめた。
果たしてこのような状態で、北海道まで行けるのだろうか。
仮に行けたとして、そこに何があるのだろうか。
すると、隣に座っていた短髪の外国人男性が私に大丈夫かと訊ねてきた。
「It's all right now, thank you. I only felt lonely, you know.(大丈夫です。ありがとう。ちょっと、哀しくなっただけだから)」と、僕は言って微笑んだ。
「Well, I feel same way same thing, once in a while. I know what you mean. (そういうこと私にもときどきありますよ。よく分かります。)」と、彼はそう言って、席から立ち上がりとても素敵な笑顔を僕に向けてくれた。
「I hope you'll have a nice trip. good bye!(よいご旅行を。さようなら。)」
「Good bye!」と僕も言った。
その少し後、「Yoko , why have you passed away…(ヨウコ、何故死んでしまった…)と呟いた。
「快速くびきの」が、柏崎駅に着いた時、白い帽子をかぶった女性が僕に声をかけた。
「あのう、隣、空いてます?」
僕は目を疑った。「ヨウコ・・・!?」
似ていない。白い帽子の目の前の女性は、髪の毛が肩ほどまであるし、顔も似ても似つかない。
しかし、彼女はヨウコに『どこかが、似すぎていた』。
「あの、あなたの名前は?」そう僕が言うと白い帽子の女性は、立ったまま目を丸くした。
「あ、すいません。空いてます。どうぞ。」
彼女は座り、窓から見える景色に目を配った後、僕の目を覗き込むように見ながら言った。
「私、田中ハルコって言います。太陽の『陽』に子どもの『子』で、『ハルコ』って読むんです。『ヨウコ』って、よく間違われるんですよ。」
その時、「快速くびきの」は、柏崎駅を出発した。
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