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こうして、無力なヴァンパイアの村は、全滅しつつあった。
さて、この村にはザインと言う若者が住んでいた。彼は、肩幅の広い、体格の良い男だ。顔立ちは角張っていて、目鼻が中央に集まっている。一見すると人の良さそうな印象だった。
彼は、結婚して子供が産まれたばかりだった。この騒動が始まった頃、彼は友人の家に居た。
だが、火の玉が降ってくると、妻子のいる自分の家へ走り出した。
「アリシア、サーシャ、どうか無事でいてくれ」
ザインは、心の中で何度もこの言葉を繰り返しながら、家路を急いでいた。
燃え盛る家が崩れてくる。逃げ惑う人々とぶつかる。
ザインは、やっとの思いで妻子がいる筈の我が家に戻って来た。
ザインは、その場に呆然と立ち尽くしていた。彼の家は、火の玉の直撃を受け、炎上していた。
「アァァァァ!」
ザインは、声にならない叫びを発した。そんな彼を、複数の紅い兵隊が取り囲む。
「こいつ、泣いてやがるぜ!」
悲しみに倒れ臥したザインに、冷笑を浴びせる兵隊達。ザインの体は、小刻に震えていた。
「よし、一思いに首を撥ねてやろう」
兵隊の一人が、腰の剣を引き抜いた。白刃が、炎の照り返しを反射する。
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