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「えっと……俺は……」
なんだか不思議な生き物だ。
カピバラにしては小さくて、フワフワした羽がついてて、しかも話す。
得体のしれない生き物に本名を知られるとまずい。……ってのは、俺が子供のときに読んでもらっていた絵本じゃ定番の話だった。
こいつに名前を教えても大丈夫なのか?
のんきそうなフォルムと声で油断させようってやりくちなんじゃないか?
こんな小さい生き物が人間を食べるかどうかは分からないけど、絵本の定番の流れだと、使役されたりとかもある。やっかいなことになるのは間違いない。
「なに?名前、忘れちゃったの?それは困ったかも。ここには何しに来たか、覚えてる?」
俺が答えないのを、カピバラのほうは答えられないからだと勘違いしたらしい。おかげで、俺が内心すごく焦ってるのには、まったく気づかないでいてくれた。
カピバラもどきは人間みたいに首を傾げてから、ふわっと羽を動かした。すいっと俺の周りを一周する。
羽ばたきに音をほとんどたてないくせに、距離が近すぎるせいで空気が動く。これ、ぜったい姿が見えてなかったら、背後から襲われても気づけない。けっこう怖い。
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