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俺が両手を軽くすぼめると、自称精霊の毛皮生物は簡単に握れた。硬そうに見える毛は本物のカピバラとは違う。ふわふわしていて暖かくて、つくづくこの謎の生き物が心配になってくる。
なんか、もう……。いいや。
「俺はレオリール。従兄弟たちにここに閉じ込められて、これから餓死させられるとこ」
俺はさっきまでいた扉前の、水のないところに向かって歩く。ずっと冷たい水につかってるのはいい気分じゃない。乾いた床に腰を下ろしたところでちょうど、腹がぐうと鳴った。
「餓死させられちゃうの?」
「死にたくなんてないけどね」
はぁ、と俺は大きく息を吐いた。
空腹もそうだけど、喉が渇いてきた。今はまだ我慢できるからいい。……いざとなったら、そこに溜まってる水をすする?その勇気が俺にあるか?
「この扉はがっちり閉まってるからぜんぜん開かないし、助けに来てくれそうな部下とは引き離されてるし、このとおり空腹だし、喉も渇いてきちゃったし、どうしようもないよ」
壁に寄りかかったら、ひんやりしていて体温が奪われていく感じがした。この部屋は冷えすぎだ。
「……助けてあげよっか?」
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