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「ねぇ、とりあえず、こっちおいでよ。
暗くて寒いところでお腹空かせてるから、考えが暗くなるんだよ。人間の食べられるもの、ちゃんと用意してあげるから、アタシに着いてきて」
すい、と先に進んでしまったうららちゃんをあわてて俺は追いかける。出ていくのも怖いけど、今さら一人になるのも嫌だった。
うす暗く、埃っぽい廊下を進み、塵が積もった階段を上る。その先もまた、たくさんの古びた扉がずらりと並んだ通路だ。俺がこの城に入ってきた扉も通りすぎた。
曲がり角や別れ通路がずいぶんあるから、まるで迷路みたいだ。
やがて、俺たちはこじんまりとした庭園のような場所に出た。暗い所にいたから目の奥が少し痛い。
かなり長い間、人の手が入っていなかった場所だとすぐにわかった。
そこは王城を彩る庭園として造られたのではなさそうな場所だ。ちょっとした、建物どうしの隙間を、見苦しくないようにとだけ整えた空間。
伸び放題の草木と、崩れた石に埋もれた小さな泉。
「きれいなお庭でしょ」
足を止めてしまったせいか、だいぶ先を飛んでいたうららが今いるのは、バラかなにか、緑色をした茨のアーチのあたりだ。通行部が不自然に小さいような気がするのは、ここも手入れをする人間がいないからだろう。
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