彼らの本意

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あれから、携帯の電源は入れてない。 怖かった。かかってくるのも、かかってこないのも…。 私は電源の入っていない携帯を見つめていた。 「なに?携帯こわれた?」 ビクッとして振り返ると、忍がいた。 「何よ…朝から変じゃない?急に会社でこんなに声かけてくるなんて…」 「いやー…やっぱりさ、元嫁が暗い顔してるとさ、幸せになっちゃった元夫としては、心が痛いわけよ」 「え?意味わかりませんけど」 『一方的な理由で離婚したくせに…今更』 「…半分は冗談だよ。半分でって言い方は良くないな…」 「本当にね…」 「実はさ、圭佑から頼まれた」 「え?!なんで?何を?」 「ここ半年ほど、23時に電話がかかってきてたろ?あれさ、俺が番号教えたんだ。お前さ、覚えてないかも知んないけど、あいつ結婚式の二次会に来てて、その時にお前に一目惚れしたんだよ…」 「え?なにそれ…」 「離婚した時、圭佑に殴られたんだ。お前を簡単に捨てたって。そんな程度なのに、自分は我慢してたって…自分の方が幸せにできるはずだったって…。だからそんなに言うなら、やってみればって…」 「それで、私の番号を教えたわけ?」 「…ああ…でも、俺も自己中だったなって思ってて、美沙子が救われるならって。」 「何なの?信じられない…」 私は立ち去ろうとした。忍は腕を掴んで、 「…頼むよ、携帯の電源を入れてやってくれ…圭佑、待ってるからさ」 私は手を振りほどいた。 「お前だって、待ってたんだろ?」 私は忍の声を背中で聞いて、振り返らずにその場を後にした。
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