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『100万ドルの夜景』って言葉の意味を、数年前までまったく勘違いしていた。
いつの時代のレートかはさておき、てっきり100万ドルに相当するぐらい価値のある美しい夜景のことをそう呼んでいるのだとばかり思っていた。
「正樹、アンタがモテない理由がわかった。そんなのググんなくたって小学生でも知ってるわよ」と、さんざん姉にバカにされた数日後に、当時何となく付き合っていた人に連れて行ってもらった長崎の稲佐山で、それこそ100万ドルでは足りないほどの、息をするのも忘れるぐらいきれいな夜景を見た。
年上の、やさしい人だった。
何となく付き合っていたその人と、2人きりで過ごしたそれが最後の夜だった。
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