【1】 退屈

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「でも、今更急ぐのも何だしなぁ。デートって気分じゃないし―――電話しよ、電話。まずは謝罪して、それからもっともらしい言い訳して、完璧完璧♪」 「お前な…」  電話を切ってシュウの方を見ると、シュウはいつも通り何考えてんだか分かんないような無表情だった。いつもと違うのは、それが何となくボーっとしてるっぽい所。 「シュウ~?」 「…あ、終わったのか? ―――相変わらず派手なスマホだな」 「いいじゃんヒョウ柄。ハッ! もしや牛柄の方が良かったとかそういう系!?」 「ははっ阿呆。いいよソレで。似合ってる」  シュウはそう言って軽く笑いながら腕時計に目を落とすと、「俺、この後幹と会う約束してるから。またな」と言って、去って行ってしまった。 「…んじゃ、しばらくはこのヒョウ柄でいるよ」  言いそびれた言葉を、シュウの背中を見送りながら一人呟く。  最近、俺も変だけど、シュウも変だと思う。  シュウと俺とは高校からの付き合い。アイツはいつも無表情で、そのせいで周りから距離をおかれていた。俺も何か距離をおかれてたから、社会生活を営むうえでの「友人」として彼に目をつけた。それが俺達の付き合いの始まりだったわけなんだけど…。  最近シュウは、ワケもなくボーっとしたり、よく笑ったりする。何かよく分かんないけど、言い表してみると、「カドがとれた」ってヤツ?     
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