12人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ
2、「OL刑事」
丸の内の総合商社で働く女性一般職、いわゆるOLの鮎川芳子<あゆかわよしこ>。
しかしそれは仮の姿本職は警察官、しかも警視庁公安部外事課の潜入捜査官だ。
海外支社での兵器の迂回取引の疑惑を追って、現在の総合商社に潜入して早8年。
まずは信用させるため、お局様に奉公し、嫌な同僚や上司との飲み会にも参加
カラオケ、合コン、社内行事と大活躍。
「芳子がいない飲み会は考えられない」
「芳子が盛り上げてくれた合コンでカップルが続々誕生」と言われるようになるまで5年かかった。
さらに仕事の面でも真面目に取り組んだため
「鮎川の資料で大型プラントが受注できた」
「鮎川がゴルフを盛り上げてくれたからタンカーが売れた」
本来の狙いと違い、勤める部門の売り上げは右肩上がりを続けていた。
今年で潜入入社8年目。
重要な仕事も任され、人事からは総合職への転籍も勧められている。
いつしか『頼りになるベテランOL』として社内外の様々な『もめ事』が相談されるようになっていた。
「財布が更衣室で盗まれました、犯人を見つけて下さい」
「夜キャバクラで働いているのがバレてしまった」
「社内不倫を清算したいんですが」
「上司の子供を妊娠しました、どうしたらいいでしょうか?」
「付き合っている彼氏がホモみたいなんですが、聞いてもいいでしょうか?」
「実家の親の介護」
「子供の受験」
などなど・・・・「丸の内の影の相談役」と他社のOLにも噂される存在にいつしかなっていた。
一方で本業の『海外でのテロ組織との武器取引捜査』はやっと糸口にたどり着いたばかりで、遅々として進まず。
まだまだ実体解明まで数年がかかりそうだ。
最近は公安部外事課長からの指令も途絶え気味
心身ともに世話焼きOLになりかかっている自分に葛藤する。
悩める30歳。それが「OL刑事」!
「銀座、新橋、有楽町、右も左もリヤ充ばかり、お国の忠義を心に秘めて、背中にしょった桜田紋、女一匹いばら道 誰か私を癒して欲しい」
がんばれ芳子!
最初のコメントを投稿しよう!