最終章 貴方と溽暑にまどろむ

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その言葉に昌弘は少しだけ間を置くと緑の姿を思い出して答えた。 「.....あいつは楽しそうに勉強してる」 『勉強してからじゃないとセックスしなかったから必死にやってたし』 こんな思考になってしまうのはビールを飲んだからに他ならない。 そんな風に都合よく考えていれば隣の梶原がビールジョッキをドンッと音を鳴らし卓上に置いた。 「んなわけないでしょ! 高校生なんて恋して遊んでって時代をさ勉強ばっかとか嫌に決まってるだろ? それとも何か? ありがちな生徒が家庭教師の男に恋してるってヤツか? それだったら羨ましいぞ! 」 最後尾には梶原の願望が見え隠れしていたが昌弘にとって重要なのはそこではなかった。 『生徒が家庭教師に恋してるって』 梶原の言葉が昌弘の脳内で緑の姿を思い浮かばせる。 『まーくん...すきぃ』 情事の最中に耳元で囁かれた言葉を思い出してしまった。 店内を覆う喧騒と混ざり合った色んな匂いが存在する中、記憶の中の緑が昌弘の耳元を擽る。 『まーくん』 「......マジか」 そんな昌弘に向かって梶原がポツリと漏らすも本人には意味がわからない。 梶原の目に写ったのは、緑の言葉を思い出した昌弘のほんのりと赤く染まった顔であった。 その顔が全てを露呈しており梶原の口からつい零れることとなったのだ。 「くっ! イケメンで勉強できて生徒から好き好き言われて...このリア充めっ! 滅びろっ! 」 「は? なんだそれ」 「と、ところでそのミドリちゃんはやっぱり可愛いのか? 」 梶原は一気に距離を詰めて肩を組めば内緒話をするように小声で聞いてきた。 『可愛い』 そう聞かれて思い出すのは緑の大胆な誘う姿だとか、昌弘の上に跨りいきり勃ったモノを咥え込んで腰を淫らに振りまくる姿だとか、キスが好きすぎてしょっ中求めてくる姿だとか。 「.........」 だらしなく緩みそうになる唇を噛み締めると昌弘は態と答えなかった。 その姿に梶原は苦笑しながら口を開く。 「西野...黙っても無駄みたいだ...お前、今すげぇ顔真っ赤になってるよ」 脳内を緑で満たしてしまった昌弘の顔は赤く火照りその顔が全てを物語っていた。
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