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5
あの日、昌弘が浅井家を訪れなかった日を境にそれから一週間昌弘の休みは続いた。
外は相変わらず雨が降り続いており鬱々としてしまう。
緑はリビングのソファで一人横になると今日も鳴らない電話を待っていた。
『昌弘くんは大学の研究が忙しいみたいだから一週間休みたいって事だった。それから、電話を掛けてきても取れないかもしれないとも言っていたぞ』
と、そう父親の口から知らされた事実。
一度も連絡を入れる事なく全て透とのやりとりを後々聞かされていた緑は胸の奥が気持ち悪くなるのを必死に押し留めた。
一週間ならばその期限は今日であり、緑は電話したくなる気持ちを必死に抑えながら昌弘からかかってくるのを待つ。
忍との関係をきっかけに来なくなった昌弘。
誤解を解きたくても解けない現状に地団駄を踏みたくなる。
透からは『大学の研究が』と聞いているがタイミングから考えても一週間前の事が原因であると思って間違えないのだ。
それでも自分から電話ができないのはやはり突きつけられる現実が恐ろしいからで、電話を待つことはできても鳴らす事ができないのである。
『あの時、無理矢理捕まえてでもシノとの事は誤解だって言えばこんな風にはなってなかったかな』
ソファの上で瞳を閉じればそんな風に考えてしまいもう一度開く。
正面に見える時計は既にいつもの時間を1時間過ぎており昌弘がやって来る事はないだろうと判断できる。
『まーくん...会いたい...』
このまま幾日、家にいても待ち人が来る気配はなく日々だけが過ぎていきそうで怖くなる。
「まーくんの大学行こうかな」
ポツリと漏らした音は誰にも聞こえていない。
『きっと、迷惑に思われるかもだけど』
『誤解だけは絶対にといておきたい』
『それだけでもいいから』
そう思い至れば緑はソファから起き上がり床へとおりた。
大きな窓越しに外を見上げれば先程まで降り続いていた雨が止み、雲の合間に少しだけ太陽が照らす光が差し込んでいる。
その景色を見ながら緑は明日昌弘の大学へと赴く決心をしたのだった。
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