最終章 貴方と溽暑にまどろむ

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昨日一時的に雨が止んでしまってからは、どんよりとした雲が覆っている事には変わらなかったが降り続いていた雨はピタリと止んでいた。 特に梅雨明け宣言が出たわけではないがもしかすると近しいのかもしれない。 緑は既に夏服となっている真っ白な開襟シャツの胸元の襟をパタパタと仰ぎながら堂々と構える門扉を前に佇んでいた。 「ここがまーくんのいる大学....っつかあちーな」 雨は降っていないものの妙に高い湿度の所為で体に纏わりつくような暑さを感じてしまう。 門扉の向こうには広大な敷地が広がっており、自分の高校との明らかな面積の違いに昌弘を見つけ出すのが途方も無い気がしてきた。 「....一回だけ」 ポケットから携帯電話を取り出しアドレス帳から昌弘の名前を引っ張り出す。 一週間前の来なくなった日を境に一度も連絡をしていない為既に履歴は消えていた。 『まーくん』と書かれた文字を見つけタップすれば小さくコールが聞こえてきた。 1回...2回...3回...。 鳴り続けるコールがまるで緑の事を拒絶しているように思え胸の奥がズンと重くなる。 一向に鳴り止まないコールをプツリと切れば携帯電話をポケットにしまいその広大な敷地へと思い切って足を一歩踏み入れた。 「...行こう」 泣きそうになるのを唇を噛み締めて奮い立たせる。 既に自分は拒絶され、嫌われたのかもしれないがこのまま誤解されっぱなしは嫌だと足を動かした。
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