269人が本棚に入れています
本棚に追加
「おーい、しょーねーん。...起きてるかー? 」
突然のかけられた声は確かに『西野』と固有名詞が飛び出しており昌弘を知る人物なのかと思えばすぐに反応する事ができなかった。
「おーい」と緑のすぐ前でその目が捉えているのか確認するように手をヒラヒラと振る軽そうな男。
「あっ..あの..俺...」
名も知らぬ軽そうな男の存在につい涙が込み上がってくるのを必死に止めようとすれば声がどもってしまった。
緑のそんな姿を見つめていた男は「ふーん」とその様子を見ていればふと問いかけてきた。
「何? おまえ、西野の弟なの? 」
その言葉に緑はキョトンとして見上げる。
「だって、西野の弟が兄貴を探しに来て色んな奴に声かけてるって噂になってたぞ? 」
その話を聞けばなるほどと、合点がいった。
問いかけた際、高確率で西野の弟という認定をされいたからだ。
制服姿で人探しなど同性ならば兄弟と思われても不思議はない。
特に問題が無いと思い放置していたがまさか噂になっていたとは吃驚である。
しかし、目の前にいる人物は昌弘を知る人物なのだ。今までのようにその誤解を放置するわけにもいかず訂正する。
「あの、なんか皆さんにそう思われたみたいなんですけど...その違くて」
「ちがうのか? 言われてみりゃ、似てないもんなー」
緑の言葉に「ははは」と笑いながら答える男はやはり昌弘を知っていると確信する。
昌弘に繋がる人物だと思えば込み上げてくる涙が溢れないように堪えながら真っ直ぐ見つめ名乗った。
「...あの、俺...西野..先.生に勉強教えてもらってる浅井と言います」
言い慣れない呼称に舌がスムーズに動かなかった。
緑のその言葉に目をまん丸くさせて凝視する男。
もしや、声が震えたのかと思いもしたが目の前の男から出たのは意味不明な言葉だった。
「おいおい、まさかお前が西野の生徒のミドリちゃんなのか? 」
最初のコメントを投稿しよう!