最終章 貴方と溽暑にまどろむ

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6 見つめた先にあったのは梶原の手により掴まれた緑の手で。 昌弘は瞬間激しい憎悪が己の中でいっぱいになるのがわかった。 「チッ.....」 沸き上がる憎悪が果たしてどちらに向けてのものかはわからなかったがどうしようもない感情につい舌打ちをしてしまう。 瞬間立ち上がり勢いよく二人の元へと近づくと、昌弘は掴まれた手を離すように二人を両手で引き離しそのまま梶原を外に追いやった。 「ちょっ...何やって、おいっ」 突然の昌弘の行動にびっくりしたのか梶原が焦っている。 「緑をここまで連れて来てくれたことには感謝する。けど、後はこっちの問題だから」 しかし、そんな梶原とは対照的に静かに言うとあっという間に勢いよくバタンッと派手な音を立てて扉を閉めるとカチャリと施錠した。 施錠した指先を離し、振り向けばそこには確かに一週間振りとなる緑。 栗色のくるりとした髪も。 こちらを見つめる涙ぐんだ大きな瞳も。 開襟シャツから少しばかり見える厭らしい鎖骨も。 なんら変わりないでいる。 ただ、その表情はこれまでに見たことのない不安そうな顔であり、ジッとこちらを見つめていた。 「.......」 『こんな表情する奴だったか? 』 その姿につい後ろめたくなるのは、嘘をついて家庭教師を休んでいるからに他ならない。 何も言わない緑を放置すると昌弘はもう一度椅子に座り机に向かった。 しかし、目の前に散らばる用紙など目に入らない。 意識はすぐそばにいる緑に全てを奪われたようであり、こうなったきっかけを思い出していた。
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