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漏らした言葉は確かにきちんと音になっていたようで目の前の緑にも伝わったようである。
その証拠に緑は目を見開き、口元がわなわなと動いていた。
「...あ...あ...」
「別に俺じゃなくてもいいんだろ? 」
傷つけようという意思を持った言葉が己の口から飛びだし緑へと攻撃する。
その攻撃を緑は頭を左右に振りながら必死に否定した。
「...ちが」
「ああ。そう言えばさっきも梶原と仲良く手ぇ繋いで来てたじゃないか? 梶原に慰めてもらえばいいだろ? 」
「....ちがう」
「何が違うんだ? あの幼馴染だけじゃ足りなかったのか? それとも家庭教師ってのが珍しか...ああ、そっか...」
そこまで一気に捲し立てるように言うとピタリと止み、自嘲するような顔で緑を見つめれば呟いた。
「俺が透さんを好きだからか」
緑の目が見開き昌弘を凝視する。
しかし自嘲したままの昌弘の言葉は止まらない。
「自分の父親を好きな男と寝るって...はは。それ面白いのか? 」
既に動き出した口はもう自分の意思では止まらないのか、まるで意思を持った生き物のようだ。
「...ちが...まーくん...何言って」
まるで傷つける事を目的にしたような言葉が止まらない。
「そもそも自分の父親と寝るなんてこと自体おかしいだろ」
その瞬間、緑が近くの机を蹴り上げて叫んだ。
「ちがうっつってんだろっ! 」
そこには我慢していた涙がまるで堰を切ったようにボロボロと流れる緑が顔を赤くし目を釣り上げていた。
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