プロローグ

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前略 天国にいる、ははうえ どの。 俺は、今、恋をしています。 用意された参考書とノートにシャーペンを滑らせながらも意識は向かいに座る男にばかり向かっていて、身に入りません。 ちらりとその姿を盗み見てしまうのだって仕方がないと思うんです。 だって目の前には健康的に焼けた肌にサイドとバックを刈り込んだ黒髪のベリーショートという髪型がよく似合っている男。 スッと通った鼻にキリリとした意思の強そうな瞳が印象的でとにかく男前なんです。 参考書をシャーペンでくるくるしながらも意識が向かいの男から離れないのでジッと盗み見してるのだって許してください。 そんな風にこの空間を満喫していたら邪魔はすぐに入りました。 自室で勉強していた所にノックの音がしたのです。 と、目の前の男の空気が変わったのは同時でした。 ノックの後、カチャリとドアノブが回され扉が開く音が真後ろからします。 父親が入ってきた事など、振り返らなくてもわかりました。 そしてジッと向かいの男を見ていた俺は、男の目元から頬にかけて赤く染まるのだって見逃しませんでした。 ははうえ どの。 ははうえ どの。 俺は、今、恋をしています。 貴女の夫に恋するこの男の事です。
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