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「おまえより仕事のできない女は、いっぱいいただろうに。また愛想振れないでクビになったか」
「はぁ・・・・そうだよ」
「おまえも凝りねぇなぁ。ははは。まぁ、ほかの女の方が世渡り上手だったってこった。
おまえ、頑固で柔軟性がないからなぁ」
「うん」
「素材は悪くねぇのにな。この格好に、このしゃべり言葉に、この表情じゃ、男子社員も楽しみがねぇよな」
「そう?」
「おまえはいい意味で素晴らしく男らしい! 会社だとそれが求められてないってのが惜しいな」
「それが求められてる会社なんてないけど」
「はっは、確かに! わかってるねぇ、月子ちゃん」
「ほめられてる気がしない」
「オレさぁ、今回の仕事、大変だったんだぜー。クライアントが物分りの悪いジジイでさ、感覚的にも全然ウマが合わねぇしさ、デザインで儲けることしか頭にないんだから」
「ああ」
「それでも、ギャラがいい仕事だったしよ、棒に振るわけにもいかなくて、重箱の隅つつくような嫌味言われながら妥協、妥協で涙を飲んでこなしたよ。後味わるっ! あーあ、終ったけど楽しい仕事じゃなかった。疲れた」
「エライなぁ。仕事は仕事として、やり遂げられるだけすごい」
「わかってないなぁ、おまえ」
「なにが?」
「だってオレ、アーティストなんだぜ」
「知らなかったよ」
「冗談言うなよ。自分で感じたことをそのまま表現する、それを仕事にしたかったからこの道を選んだんだよ。でも、生活していかなきゃならんからなぁ。そうも言っていられなくて、それが一番辛いところだ」
「ふうん」
「おまえとか、アーティスト系なのかもしれないよ」
「何を突然。私、絵も描けないし歌も歌えないよ」
「そういう意味じゃなくて。オレがこの世界にまだいるのは、自分のやりたいこと以外の仕事でも、生活のためにがまんしてやってるからなんだけど、おまえはさ、その妥協をしないでずっときてるわけなんだから、そのうち、形になるんじゃねぇの?」
「は。仕事場が一つも長続きしないのに、何かが形になるわけがない」
「本物のアーティストはさ、感じたことや表現したいものが先にあるんだよ。それが自分自身だってことも知っちゃってる。だから、それ以外に何を言われても、どうしようもないんだよ。それしか、表現できない。それを貫いていくのが、真のアーティストだよ。風当たりは厳しいけど」
「で? 私と何の関係があるのさ」
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