奏多side

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どうしてこんなにも辛そうで 泣きそうな顔をしているんだ。 もししかしたらこれは 俺に与えられた最後のチャンスなのかもしれない。 いままで隠してきた気持ちを打ち明ける最後の。 これを逃したら一生伝えられないかもしれない。 「お前は、それで幸せ?」 「…え?」 幸せだと答えない彼女の返事を もし、最後のチャンスだと思ってもいいのならば。 「俺は、お前が幸せならそれでいいと思ってた。 たとえ隣にいるのが俺じゃなかったとしても。 でも、そんな辛そうで泣きそうなお前見てられない。」 「それってどういう…」 あいつの腕を引き抱きしめる。 「…そんな奴と結婚なんかすんなよ。」 「…」 肩のあたりが涙でじんわり濡れていく。 「…好きだ。 ずっと伊織のことが好きだった。」 「…っ!」 「俺の隣で笑ってるだけでいいから。 俺には伊織しかいないから。 伊織とじゃないと幸せになれないから。 だから俺を幸せにしてよ。」 「っ、なにそれ」 腕の中で小さく笑う彼女。 「やっと笑った。 ほら、お前も俺の隣じゃないと笑えないだろ?」 腕の力を緩めてあいつの顔を見る。
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