1話 美憂の憂鬱

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「ハァ……明日からどうしよ……」 憂鬱を引きずってバス停までの道を歩く。 一度テレポートしてしまったという事は、これから自分の気持ちをもう誤魔化せないという事。 少しでも先輩の事を考えたら、きっと私はまたテレポートしてしまう。 先輩の部屋とかちょっと見てみたいなぁなんて思おうもんなら、あっという間にそこへ行けてしまう。 (って、ダメダメ……考えないようにしないと) 違う事を考えようと今日の晩御飯を想像してみる。 今から2時間かけて帰ったら、空腹はピークを過ぎそうだ。 というか、食べてもすぐに寝なきゃ明日起きられない気がする。 (それならいっそ、菓子パンでも食べながら帰ろうかな……) コンビニで唐揚げとメロンパンを買って、今日の夜ごはんはいらないとお母さんに連絡した。 「わー、このパクチーレモン味のからあげめちゃうま……」 がっつりと香るパクチーと、唐揚げと相性抜群のレモンが口の中を満たす。 思わずうっとりと頬を押さえた。 「……なるほど。俺は好みじゃねーな」 「孝宏!」 いつの間にかすぐ隣で孝宏が私の唐揚げをひとつつまみ上げ口の中に放る。 「あっ、私の唐揚げ!」 「ひとつくらいいいだろ」 「私の晩御飯がー……」 あと3つになってしまった……。 「私にはそのひとつが死活問題なの!お小遣い少ないんだから……」 遠くの高校まで無理言って通わしてもらってる身としてはお小遣いを増やしてほしいなどと言えるはずもなく、たまに買い食いや本を買えるくらいのお小遣いで何とか月々のやりくりをしている。 そんな私の唐揚げはその辺の高校生が買い食いするのと非じゃない……と思う。 「なぁ、お前何でわざわざうちの学校通ってんの?」 私の心を見透かしたように孝宏が首を傾げた。
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