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「それより私はなんで孝宏がここにいるのか知りたい」
「一緒に帰るって言っただろ。お前待ってなかったけど」
「それはっ……バスの時間間に合わないと思って」
「買い食いする時間あるのに?」
ニヤリと笑う孝宏は、意地悪だ。
「色々、ひとりのがいいの!」
「先輩とは2人がいいのに?」
「!?」
聞き逃すことが出来なくて、私は思わず孝宏を二度見した。
ちょっとまって、それって……
「見てたの?」
「お前が出てくるとこが見えただけ。で、中には先輩しかいなかったから」
「あれはっ……私が間違えただけだから!」
そう、間違えただけ。
あれ、でも先輩には忍者の末裔だって設定だっけ……
なんだか自分の中で処理できずに頭の中が高速回転している。
グルグルグルグル。
「お前、先輩の事好きなの?」
「!?ゴホゴホッ……」
唐揚げの代わりに口に運んだメロンパンが口の中の水分を全部奪って、一気に体中から蒸発したような気がする。
盛大にむせた私を肯定だと捉えた孝宏は
「ふーん」
別段興味なさそうに呟いただけ。
「あの先輩の、どこがいいの?」
そう続けた孝宏の声は、今まで聞いた中で一番平坦だった。
「別に……そういうんじゃないよ」
「じゃあ、なんであんなとこで2人でいたんだよ。お前マネージャーでも何でもないだろ?」
「だからあれは間違えただけだって!」
あれ?なんだこれ。
なんか……おかしくない?
なんで孝宏はそんな事気にしてんの?
友達だから?私の事心配してるの?
そもそも心配って?先輩はみんなから好かれる人気者で、私がもし先輩を好きだとしてもそれは不通にあり得る事で……
じゃあ……どうして……?
また高速回転し出した思考の中で、孝宏が私の腕を掴む。
「あの先輩は、やめとけよ」
「だから違う……」
そうだよ、違う。まだ間に合う。
私は先輩の事なんか好きじゃない。好きじゃ……
――次の瞬間、私は本日2度目のテレポートをした。
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