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駅までの道のりを歩きながら、私は重い口を開いた。
「その……驚いてる、よね?」
「当たり前だろ」
「さっきみたいな事、初めてじゃないの」
そして私はこれまでのテレポートについて話した。
初めてテレポートしたのは、小学5年生の時で、相手は同級生の篤史君だった事。
ある日突然篤史君の事を大好きだと思ったら、彼が目の前にいた事。
そしてそれが彼が友達とサッカーをしている時で、同級生にからかわれた事。
それから何度かそういう事があってもう恋愛しないと決めた事。
「それで、誰も知らないところで一から大人しく生活しようって思ってこの高校に通う事にしたの」
最後にさっき孝宏に質問された答えをポツリと呟く。
それを孝宏が覚えているかはわからないけど。
「それ……ホントなんだな?」
「こんな嘘つかないし……孝宏だって今経験したでしょ?」
私と同じように、一瞬で先輩の前に行ってしまった。
体験してしまったのだから、それはもう信じるしかないわけで……。
孝宏はハァとため息をついた。
「お前、面白いな」
「は?」
「だってあんな事できんだろ?どこでも行きたい放題だし、いつでも会えるなんて楽しいじゃん」
「好きな人の目の前にしか行けないし、いつでも会えるわけじゃないよ」
「……お前、両想いになった事はねーの?恋人、とかさ」
「ないよ。そんなんだから気持ち悪がられてたし」
だからすっかり恋愛なんて嫌になってしまって、遠ざけようと思ってたのだ。
「両想いになったら、お互い好きな時に好きな人に会えて幸せじゃね?今は片思いだから気持ち悪がられるのかもしれねーけど、俺は彼女がそういう奴だったら会いに来る度に幸せだなーって思う」
「どうして?気持ち悪くないの?」
「だってそれだけ俺の事好きだって事だろ?嬉しいじゃん」
確かに、と納得させられそうになる。
例えば先輩が私と同じ力を持っていたとして、それを知ってたら確かに孝宏と同じように思うかもしれない。
でも、今はそんな事しても私の思いが見透かされるだけ。
私は曖昧に頷いて、孝宏の話に耳を傾ける。
「だから、おれはいいと思うよ。愛されてるって、疑えない感じ」
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