1話 美憂の憂鬱

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「だから俺はいいと思うよ。愛されてるって疑えない感じ」 孝宏はニッと笑っていて、お世辞でもなんてもなくそう思ってくれているのだとわかる。 (愛されてるのを、疑えない……) それはきっと、胃もたれしそうなほど甘い日々で。 初めて自分の能力を好きになれそうな気がした。 「さて、明日からどうするかだな」 「そうだね……」 少なくとも先輩にはバレてしまっていて、これ以上学校に能力の事が知られたらおしまいだ。 長い時間かけてせっかく通っている高校でも、私は変人扱いになってしまう。 「なんか、不思議な気分」 「は?なんでだよ?」 「だって、私の秘密知って仲良くしてくれる人なんていなかったから」 「それは……見る目がないな」 「……うん」 心が肉まんみたいにホカホカと温かい。 そしてなんだかくすぐったくて、私は気づいたら笑っていた。 「俺も、誰かにそれくらい想われたら幸せなのかなー」 「それくらいって、テレポートしちゃうくらい?」 「そ。好きで好きで仕方ないって感じ、少しくらい味わってみたいわ」 「んー、孝宏だからね……」 「それどういう意味?」 「そのまんまの意味」 顔も良くて、誰にでも気さくで、成績が多少悪くても気にしてなくて、クラスの中心にいるような人。 多分そんな孝宏の事を好きな女子は多いんだと思う。 ただ、それをみんなが分かっているから、誰も踏み出せないだけ。 「孝宏なら、すぐにできるよ。そういう相手」 慰めでも何でもなく、そう思う。 だけど孝宏は「まぁなー」と笑っただけで、私の言葉なんて信じてないみたいだった。
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