0人が本棚に入れています
本棚に追加
「だから俺はいいと思うよ。愛されてるって疑えない感じ」
孝宏はニッと笑っていて、お世辞でもなんてもなくそう思ってくれているのだとわかる。
(愛されてるのを、疑えない……)
それはきっと、胃もたれしそうなほど甘い日々で。
初めて自分の能力を好きになれそうな気がした。
「さて、明日からどうするかだな」
「そうだね……」
少なくとも先輩にはバレてしまっていて、これ以上学校に能力の事が知られたらおしまいだ。
長い時間かけてせっかく通っている高校でも、私は変人扱いになってしまう。
「なんか、不思議な気分」
「は?なんでだよ?」
「だって、私の秘密知って仲良くしてくれる人なんていなかったから」
「それは……見る目がないな」
「……うん」
心が肉まんみたいにホカホカと温かい。
そしてなんだかくすぐったくて、私は気づいたら笑っていた。
「俺も、誰かにそれくらい想われたら幸せなのかなー」
「それくらいって、テレポートしちゃうくらい?」
「そ。好きで好きで仕方ないって感じ、少しくらい味わってみたいわ」
「んー、孝宏だからね……」
「それどういう意味?」
「そのまんまの意味」
顔も良くて、誰にでも気さくで、成績が多少悪くても気にしてなくて、クラスの中心にいるような人。
多分そんな孝宏の事を好きな女子は多いんだと思う。
ただ、それをみんなが分かっているから、誰も踏み出せないだけ。
「孝宏なら、すぐにできるよ。そういう相手」
慰めでも何でもなく、そう思う。
だけど孝宏は「まぁなー」と笑っただけで、私の言葉なんて信じてないみたいだった。
最初のコメントを投稿しよう!