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あれは何処の県でいつの季節であっただろうか。どこかふらりと出かけた旅先の小さな町だったと記憶する。しかしどうしても思い出すことが出来ないまま数年。今はインターネットの時代で何でも簡単に調べる事が出来るとはいえ、何県どころか肝心の店の名前すら思い出せないのだから困ったものである。せめて手がかりにと前後の行動の記憶を辿るもそれすらも全く思い出せない。 しかし私は間違いなく一軒のカフェに旅先で入店し、そこでコーヒー片手に本を読むふりをして店主と客の会話に耳をそばだてていたのである。その行為は「お前はなんてあさましい奴なんだ」と非難されるのは覚悟の上で私はその時に聞いた話を思い出して書いてみようと思う。 これから書く内容は小説として成り立つかわからない。記録でもない。では日記か。確かにそれが一番近いものであろう。しかし日記というのは本来人の目に触れるのを前提で書くものではない。よってこれは日記でもない。しかしそんなことは私にとってどうでもいい事だ。 もしかしたら一生誰の目にも触れることがないかもしれない。それならそれでいい。 しかし何かの縁で最後まで読む人がいたとするならば、私は心から感謝する。 なんとなく文章として残したい。 ただそれだけである。
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