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「シートベルト締めてね」
「え?
……あっ……」
緊張のあまり、シートベルトすら忘れている自分に気づく。
もうやだ……っ!!
恥ずかしさでいっぱいになりながら、急いでベルトを締めようとするも手がもたついて。
カチャカチャと鈍い金属音が響く。
「貸して」
そこへ、見かねた先輩が運転席から手を伸ばして、
慣れた手つきでベルトを締めてくれた。
「……ありがとう」
「どういたしまして。
じゃあ、行こうか」
そう言って、柔らかく笑う先輩は、やっぱりどこか大人っぽくて。
制服姿の自分に対して、なんで今日に限って着替えを持って来なかったんだろうと、改めて後悔した。
「今日、2時間しかとれなくて」
車が走り出して少し経った頃。
ハンドルを握る先輩が、口を開いた。
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