3283人が本棚に入れています
本棚に追加
にっこりと、笑っている様に見えるけれど、それは表情だけで。
その笑顔の下にどんな思惑が隠れているんだろうと思うと、先輩からは「着くまでのお楽しみ」と知らされていない目的地にこのまま到着して欲しくない
気もした。
「着いたよ」
車を走らせること40分。
先輩が連れてきてくれたのは、人気のない海沿いに佇む一軒のカフェだった。
白い壁に赤い屋根の外観はまるで一軒家のようで。
出入り口の前には手入れされた観葉植物の鉢が一つ置かれていた。
「いらっしゃいませ!」
二人で店内に入ると、店主らしきエプロン姿の男性がカウンターから現れる。
「お、直生じゃないか」
デニムのシャツに黒いパンツ姿のその人は、先輩に気づくなり一重の目元をくしゃっとさせて笑った。
スポーツをやっていた様ながっちりとした体型に、
短めの黒髪がよく似合っている。
「辻さん、今日は彼女と来ました」
最初のコメントを投稿しよう!