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「行かないで。
…………そばにいて」
このセリフを最初に口にしたのは、確か俺が小学校の低学年の時だった。
さかのぼる事、10年以上前。
物心ついた頃から両親は仕事で家を空ける事が多く、俺と姉貴は父親が雇っていた数人の家政婦と、都内に住む双方の祖父母に育てられた。
当時はどんな仕事をしているのかよく知らなかったが、若くして会社を継いだ父親は、持ち前の勘と祖父譲りの人脈で、不動産業を中心に成功した人で。
とある広告メーカーの社長令嬢だった母親と、いわゆる政略結婚してからは、二人三脚で会社を大きくしてきた。
けれど会社が大きくなると共に、父親はだんだんと家庭を省みなくなり、どんなに忙しくても2ヶ月に一度は家族で食事に出かけるという約束の場には、
いつからか母親と姉貴と俺の3人の姿しかなかった。
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