1 それからの二人

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笑顔で「今日はありがとう、楽しかったです」って言えばいいだけなのに。 別れ際の寂しさとか、切なさとか、そういう感情の方が強くて言葉も出てこない。 「また忘れてる」 そこへ、ぽつりと呟く声がして。 「えっ?」 反射的にパッと隣を見ると、車のハンドルにもたれかかる様にして私を見つめている先輩と目が合う。 その澄んだ眼差しに一瞬どきりとした。 「……シートベルト」 「あっ」 視線を落として初めて、行きの車内と同じおマヌケな行動をとる自分に気づく。 そんな私を見た先輩はさもおかしいといった様子でハハ、と笑って。 羞恥心で同じ空間にいる事も居たたまれなくなった私は、シートベルトを外した手で助手席のロックに触れる。 「なにしてんの」 「……そろそろおいとましようかと」
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